欧州、日本を含めたアジアの各地から集まった若きクリエイターたち。晩秋の名古屋は、彼らの若い好奇心のエネルギーによって季節外れの熱気で満たされた。
「ただいま/I'M HOME」と題された今回のワークショップが見つめる対象は「家」。弛まなくデザイン領野から社会へと発せられる多くの提案の先には人があり、その背後には暮らしがあり家がある。若きクリエイターたちは、それぞれ異なる価値観や習慣の中で営まれる家を直に観察・体験する。そしてそこから得られた発見や住まい方への共感、時に違和感を国籍や文化的背景を越えた議論や意見として共有し、将来のそれぞれの創造行為に向けた新たなコンセプト構築の契機としてゆくことが今回の目的であった。 初日に本企画者のイェン氏、他ゲストスピーカーによる講演と参加者自身の自宅のビジュアルレポートが披露され、翌日には5つのチームに分かれ、職業、世代、家族構成、住宅形成、趣味の観点から選ばれた家庭へとそれぞれ訪問取材に向かった。 限られた時間の中、時に市内の喫茶店、あるいは深夜の参加者宅で地域・言語・文化の壁を越えた議論の末に彼らが見出した「家」は、最終日に映像とともに発表された。内容の多くに共通していたのは、「家観」形成に関わる精神的な部分への強い興味と関心であった。彼らは物理的な器としての「家」よりも、そこに暮らす人々の縁(えにし)こそ「家」の証明であることを何より確信したかったのだ。一方で、「当たり前」という一見静的な暮らしの裏にある、変化に対して安定をはかろうとする動的な「絶えざる営み」への接近には少々踏み込みが足りなかったことが惜しまれる。しかしながら、多様な国籍と言語、価値観を超えたコミュニケーションの経験は、今後それぞれの創造活動に対する基礎体力と自信となったことだろう。また異なる主張を集約し、発表として結実させた一連の作業は、彼らが訪れた「家」同様に、メンバー相互に築かれた見えざる信頼によって生まれた連帯の成果でもあった。 ■Makoto Hagiwara 武蔵野美術大学卒業。同大学助手を経て、ハノーバー大学にて西欧の公共空間に関する研究を行う。 現在、名古屋芸術大学デザイン学部講師 |
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国際若手デザイナーワークショップ2004「ただいま/I'M HOME」
期間=2004年11月3日(水)〜11日(木)会場=国際デザインセンター、名古屋近辺 主催=国際若手デザイナーワークショップ開催委員会 企画=クレイグ・オウ・イェン(Craig Au Yeung/歐陽應霽) プロデュース=キュー・リーメイ・ジュリア/国際デザインセンター海外ネットワークディレクター プログラム
「ただいま/I'M HOME」についてのシンポジウム
期日=2004年11月4日(木)会場=国際デザインセンター フィールド・リサーチ&ディスカッション
期間=2004年11月5日(金)、11月6日(土)、11月7日(日)、11月8日(月)会場=名古屋近辺 調査先=日本の伝統家屋に住む世帯、30歳以下の若い夫婦、3世代同居世帯、公団住宅に住む世帯、有名建築家の手がけた家に住む世帯、デザインもしくはその他のクリエイティブな分野で働く世帯、独居世帯(男性)、独居世帯(女性)、何か特別な蒐集のある世帯、ペットを飼っている世帯、自宅をホームオフィスとして使う世帯、自宅で教室を営む世帯、バリアフリー対応の世帯、学生寮として使われる世帯、友人または他人の集まりで共有される世帯。計15家族 フィールド・リサーチの成果についての公開シンポジウム
期日=2004年11月11日(木)会場=国際デザインセンター 同時開催 「HOME」映像展示 [ 詳細 ]
独特の文化と生活様式の投影。中国、韓国、日本、香港、シンガポール、イスラエル、イタリア、オランダの参加者が映像で綴る自宅のビジュアルレポート。期間=2004年11月3日〜11日(木) 会場=国際デザインセンター・デザインミュージアム ※この調査に快く応じてくださった以下の名古屋の15家族のご協力によって、各家庭でのリサーチが実現しました。これからの未来を築く若者に夢と希望を与えていただいたことに、深く感謝申し上げます。 青木かず子、青木高弘、小崎修一、加藤達志、川崎瑶子、久野孝枝、後藤絹子、後藤留子、近藤万紀、斉藤美穂、鈴木賀子、竹村邦顕・幸子、本田敬、松浦藻文、安北和郎・千差、柳正基・ゆかり・一志・雄二の皆様 |
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