アジアのカタチ展

ライフエディトリアルの視点

Sujata Keshavan Guha
横川正紀
「CIBONE」・(株)ジョージズファニチュア代表

www.cibone.com


世界各国のデザイン、プロダクトを独自のセレクトで扱う(株)ジョージズファニチュア代表の横川正紀氏。建築を専攻し流通界へ入った若き経営者は、モノと人の関わりをどのように捉えているのだろうか。
 建築を専攻した氏は、卒業後街づくり(都市計画)に関わりたいと考えていた。時あたかもバブル経済がはじけた直後、志を貫徹するには厳しい状況にあった。が、その方向性を模索する中で、実は、1つひとつのコンテンツの質が大切なのではないかと気づき、流通に興味を抱くようになったという。
 現在、氏が展開するのは人気の家具・雑貨店「ジョージズ(前ジョージズファニチュア)」10店舗、東京発信を目指したライフエディトリアル・ショップ「CIBONE」2店舗、カフェ「ask a giraffe」、「CIBONE」に併設するラウンジ(ミュージアム)型カフェ「TMS」等の他、ニューヨークのグロサリー「Dean & Deluca」との提携店等である。トークは、ライフエディトリアル・ショップ「CIBONE」を中心に展開された。

 個性を大切にする時代にあっては、個々の店舗に人格を持たせることが必要ということから、「都市の(骨)格」、「都会の冒険家」を表した造語から名づけられたのがショップ名の「CIBONE」である。
 アート、音楽、インテリア、ファッション等さまざまな分野で活躍するプロと、彼らの日常感に繋げた衣食住全般を考え合い、これに流通(ショップ)を繋げていく。一方、消費者は、1つのカタチにはまったライフスタイルを押しつけられるのではなく、単なるモノ売りのディスプレイではない迷路のようなお店の中から都会の生活者(冒険家)としての自分らしさを探り創り出していく。 また、店頭では、「CIBONE」編集チームによる「自分たちが何を表現したいか」を特集した月ごとのプロモーションも行なわれ、

売る側も買う側も、このように互いに交流しながら自分の欲しい生活空間を編集していく。ライフエディトリアル、いわば、実際に手にとってみることのできる3次元の雑誌を編集する感覚である。

 このためには、単に生産者側の都合に合わせただけの従来の流通の常識をはずす必要が生じてくる。消費者ニーズに合わせるという流通パラダイムの改革は非常に難しいことも多いが、この挑戦は、おもしろく感じている点でもあるという。
 郊外型の雑貨屋「ジョージズ」では、サザエさん一家に模したジョージさん一家というファミリー層(人格)の想定で、あらゆる年齢層に応える品揃えで、徒歩や自転車で来店できる、いわば「安心」を提供する「ライフスタイル」の提案を行っている。

 「CIBONE」にとってのもう1つの新しい可能性は、消費者(クライアント)とデザイナーが出会う場がほとんどない日本で、流通を通してそれを可能にしていくことである。

 自分たちがいわゆるモノ売りを超えていかにデザインを表現していくことができるか、という意味で「Tokyo Designers Block」に参加。デザインとは、単に商品の中に「ラッピング」されたものではなく、使い手とデザイナーとのコミュニケーションではないかという思いから、2002年のテーマは、新たな近郊交通システムを提案するベロタクシー(自転車タクシー)。2003年は、「Design fashion」;同じデザインのカウチを置いて、その上で、街中で出会った全くシロウトの人々に思い思いの自己表現をしてもらい、モノのデザインに新たな表情が生まれ変わって行く様を表現。2004年は、「Be Rock!」。2005年は、エキシビション自体が休止予定。

「形だけでなく、本来の人間が持っている力を追求することが、モノづくりの中における人格づくりではないか」

と横川氏は語る。
 次いで、新しい表現の形やコミュニケーションを生み出しているオランダのデザイナーによる作品を紹介しながら、なぜ今おもしろく感じられるデザインがオランダなのかを独特の切り口から披歴。デザインはコミュニケーションであると同時に時代の代弁者。移民の時代が長く、人種が混じり合うオランダは言葉や宗教の枠が希薄である。つまり、横に繋がり合うのが当たり前の国であるから、グローバル化の時代にあって、それは新しくておもしろい。
 余談と断りながら、最近訪れた韓国・ソウルでの清渓川(チョンゲチョン川)再生プロジェクト(※)の例を引き、

「人とコミュニケーションしながら、昔あったもの(文化、思想)を、時間をかけて残しながら、あるいは、護りながら前に進んでいく---というのが元々あった『アジアのカタチ』なのではないか」

と、未だ開発本位の環境問題へ一石を投じて氏のトークは締めくくられた。

※清渓川(チョンゲチョン川)再生プロジェクト:
元々は川であったところに生活道路が出来、60年代にはさらにその上にハイウェイが作られていたチョゲチョン川域。これを改めて川に再生するための、ソウル市の600年にわたる歴史と文化を守る壮大なプロジェクト。2年半にわたる修復工事を経て、2005年10月1日開通した。

▼講演要旨
「「インドはブランド」世界市場進出を図る処方箋」 -スジャタ・ケシャバン・グハ
「ライフエディトリアルの視点」- 横川正紀
「伝統技術から新製品を発想するフィリピンのモノ作り」-ケネス・コボンプエ
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