「'30s GRAPHICS」アメリカン・アール・デコのグラフィックデザイン
開催概要
国際デザインセンター・デザインミュージアムでは、開館以来収蔵品であるアメリカン・アール・デコ・コレクションをシリーズ展としてご紹介しています。第11回の今回は1930年代アメリカのポスターを中心に、印刷技術の発展とともに花開いた当時の豊かなグラフィック表現をご紹介します。
デザインの世界でも制作過程が比較的単純な分野は変化を取り入れやすく、新しいスタイルへの移行が早い。1920年代〜30年代にヨーロッパを席巻したアール・デコはやがてアメリカに波及したが、印刷表現の分野では早くからそのきざしを見ることができる。
1920年代後期には直線的に描かれたイラストレーションや幾何学模様が雑誌、書籍類に登場し、アール・デコの鮮やかな色と大胆なレイアウトはさまざまな媒体へと広がっていった。初期のややエレガントなスタイルは、経済発展とメディアの発達の中でわずかな間に変化し、カラー印刷の普及とともに独自の強く直接的なものになっていく。この時期のアメリカにおいて、グラフィックデザインは美しい装飾芸術としてではなく、むしろ優れた訴求力を持つコミュニケーションツールとして評価されたと言っていい。
1930年代に入りルーズヴェルトが大規模な経済復興政策を打ち出すと、グラフィックデザインの可能性はさらに広がりを見せる。中でも事業促進局(WPA=Works Progress Administration)による芸術家支援プログラムは、観光事業などさまざまな活動をPRする広報物にアーチストを起用し、美しいポスターを数多く生み出した。ジェローム・ロスのポスター「シー・アメリカ」、ブランチ・アーニシュの「トレーニング・イン・アート」などシンプルな幾何学形態で構成されたポスターは、強いメッセージ性を備えつつ、造形的にも非常に洗練された表現を確立している。
またこの時期を代表するポスターとしては、1933年のシカゴ万博、1939年のニューヨーク万国博覧会など、博覧会の公式ポスターも見逃すことができない。特にストーらによるニューヨーク万国博覧会のポスターは、復興を果たしたアメリカのモダンで力に満ちたイメージを内外に強く印象づけるものだった。「明日の世界」をテーマに世界初のテレビ放送も公開されたこの博覧会では多数のスーベニアグッズが制作されたが、それらのデザインもやはり広報物のイメージを損ねることのない魅力的なものであった。
当時このような形で芸術家やデザイナーが起用された意義は大きく、デザインが社会において果たす役割と影響力はアメリカ社会に広く受け入れられ、認知されていった。公的な印刷物に限らず、商品の広告やパッケージにおけるグラフィックデザインも戦略としてより重視され、それらは時に商品のメーカーやブランドのイメージをもつくりあげていったのである。
本展では数々のポスターを中心に、雑誌、広告など当時の多彩なグラフィック表現をご紹介するとともに、1930年代の万博公式ポスター、スーベニアグッズ等もあわせて展示公開いたします。
デザインミュージアム・コレクションシリーズ vol.11 「'30s GRAPHICS」アメリカン・アール・デコのグラフィックデザイン
- 会期
- 2005年3月18日(金)〜4月17日(日)
- 時間
- 11:00〜20:00(入館は19:30まで/最終日も同じ)◎会期中無休
- 会場
- 国際デザインセンター・デザインミュージアム
〒460-0008名古屋市中区栄3-18-1ナディアパーク・デザインセンタービル4階/電話:052-265-2106 - 入場料
- 一般300円/学生200円(常設展示含む)※中学生以下無料
- 主催
- 株式会社国際デザインセンター
- お問い合わせ
- デザインセンター・事業部「'30s GRAPHICS」係
アクセス
- 地下鉄名城線「矢場町」駅6番出口より徒歩5分
- 地下鉄東山線「栄」駅7番出口より徒歩7分
- ◎詳しいアクセスはこちらをご覧ください