「自然の叡智 オーストリアのデザインと建築」国際シンポジウム
スピーカー

 

現代人は自然と文化の緊張関係の中で生きている。ことに、技術が自然の構造から学んできたのに対し、設計デザインは自然現象の自由奔放さを芸術的に解釈するものである。EOOSの作品は、特にこの詩情を大切にした取り組み方を特長としている。森のはずれの朝もやをイメージしたハイテクショップの入口。家具の表面に、木を半分焦がして装飾としてあしらったものなどがそれである。

Harald Grundl
ハラルド・グリュンデル
/「EOOS」創立メンバー
www.eoos.com

1967年ウィーン生まれ。家具/プロダクトデザイン、フラッグシップショップ(母店)/ブランド関連のデザインを手がける「EOOS」(本拠地:ウィーン)の創立メンバー。「EOOS」は、1988年〜94年ウィーンの応用芸術アカデミー(the Academy of Applied Arts in Vienna)でともにデザインを学んだマルティン・ベルグマン、ゲルノット・ボーマンとともに、3人による初のコラボレーション(1990年)を経て、95年に設立。EOOS(エーオース)は、ギリシャ神話の女神オーロラが従える翼のある四頭の馬の一頭の名前で、3人の、デザインへのプログラマチックなアプローチを象徴。人類の古(いにしえ)からの儀式や本能と、新しいテクノロジーや凄まじく変貌する環境を対比し、その明暗が浮かび上がる世界を概念化し製品を創り出している。

Adidas shops' world-wide shop concept
design: EOOS

Furniture for Armani flagship shops' perfumes and cosmetics products
design: EOOS, B&B Italia

 


 

この小さな国、オーストリアの現代建築は、自然、田舎、偉大なる歴史的遺産といった相反する空間の中で発展している。 最近上がってきた、論争と新解釈を求める声。これが、折り返し、自然と歴史を新しい実験的な世界としてひとつに結びつけるような、比類のない、遊びのある空間の創造を喚起している。

Dietmar Steiner
ディートマー・シュタイナー/建築学の歴史家・理論家・評論家
www.azw.at

1951年生まれ、ウィーン芸術アカデミー(The Academy of Fine Arts in Vienna)で建築学を学ぶ。過去には、ウィーンの応用芸術アカデミー(The Academy of Applied Arts in Vienna)の建築史/建築理論研究所(The Institute of History and Theory of Architecture )で教鞭を執る。国際的な雑誌に幅広く寄稿。ヨーロッパや北南米の多くの研究機関で「都市と建築」に関し理論的な見地から講演。文化的リサーチ、出版物刊行、展示会を精力的に行う。1993年より、建築センター・ウィーン(Architekturzentrum Wien)のディレクターを務める。1995年〜99年、ミラノの『domus』誌の建築関係の記事編集責任者、1997年よりヨーロッパ建築を対象にした「ミース・ファン・デル・ローエ・パビリオン」賞諮問委員、1998年より国際建築博物館連合(International Confederation of Architectural Museums)理事、2002年第8回ヴェニス国際ビエンナーレ建築展・オーストリア館のコミッショナー。

Architekturzentrum Wien

Architekturzentrum Wien

 


 

われわれ人類は、特殊な地形や不思議な性格を持つ場所に、特別な意味を付与してきた。尖った尾根、長大な瀑布、底深い泉、美しい稜線、巨大な樹木、迷路のような洞窟。われわれの祖先はそこに世界のモデルを見たのだった。それはミクロコスモスを築く行為であり、宇宙を封印する行為であった。そこに世界を収容し、宇宙観を表象する。
建築を思考し、作るというのは空間を加工することだ。われわれは素材を切断し、曲げ、折り、孔を穿ち、研ぎ澄まし、形を作る。そこに場所が立ち現れる。
こうした加工を通して私は、未完結な出来事が不連続に連続するという今日的な叡知の形を、表現したいと考えている。

Kiyoshi Sey Takeyama
竹山 聖/建築家・設計組織「アモルフ」代表

1954年大阪生まれ。京都大学から東京大学大学院に進む。在学中から設計組織アモルフを立ち上げ、設計活動を開始。91年にアンドレア・パッラディオ賞、96年ミラノトリエンナーレ・コミッショナー。1992年から京都大学助教授。母校北野高校新校舎は10年がかりで2003年に完成。作品に周東町パストラルホール、箱根強羅花壇、べにや無何有、ブルースクリーンハウス(自邸)、SMハウス(島田雅彦邸)、レフラクションハウス(安城のアトリエ)など。著書に『独身者の住まい』(広済堂出版)など。

kazafune
design: Kiyoshi Sey Takeyama+AMORPHE
Photo:K Torimura(Nacasa & Partners)

refraction
design: Kiyoshi Sey Takeyama+AMORPHE
Photo:Yoshio Shiratori

rikuryo
design: Kiyoshi Sey Takeyama+AMORPHE
Photo:Yoshio Shiratori

 


 

再生可能な資材の利用をベースとした「ファクター10」を、再製可能なように設計した際の開発アプローチが、ここで紹介される。革新的なデザインや構造エレメントを導入することにより、従来の建築技術と比較して、エネルギーや資源の消費量を大幅に削減することができる。

Robert Wimmer
ローベルト・ヴィンマー/ウィーン工科大学・適合技術センター(GrAT)所長
www.grat.at

1996年より、ウィーン工科大学(Vienna University for Technology)に本拠を置く独立研究機関(GrAT/Center for appropriate Technology)所長。同機関は、「持続可能な」開発という倫理的チャレンジに対し実現可能なステップを提案し、「持続可能な」テクノロジー活用の具体例を主導、実現することを目的に設立。氏は、持続可能な開発に対するシステム解決、持続可能な建築物、再生可能資源、持続可能な製品開発、アセスメントメソッド(評価方法)と応用に重点を置き、国内外に向けリサーチ・実証プロジェクトのコーディネートを展開。これらの活動の他に、企業や関係分野の権威のコンサルタントを務める一方、幾つかの大学で講演も行っている。

S-house, 2005
design: Center for Appropriate Technology, Vienna University for Technology

 

 


 

自然の叡智と同様、人間も、自然の一部である。これを、破壊の後、すなわち建設用地の地ならしから新しいものが生まれようとするところで、建築に応用することができる。破壊的なものと建設的なものの入れ替わりは、自然では日常茶飯事である。建築において、建設的なものが優勢であるように、どこまで綿密に注意を払って思考し、設計し、用地付近の環境に配慮できるかは、それに携わる人間の叡智次第である。既に使い古された観のある持続性の概念は、最終的に建築上のクオリティと深く関連しており、建築物は経済性や機能性だけでなく、特に社会性や美的感覚にも答えるものでなければならない。何故なら、ひとは愛するものしか未来にまで残さないからである。

Irmfried Windbichler
イルムフリート・ヴィントビヒラー/建築家・ハウス・オブ・アーキテクチャー・グラーツ代表取締役
www.windbichler-arch.com

オーストリア・グラーツ工科大学(The Technical university in Graz)で学位取得。1982年より業務開始。2004年〜2005年ハウス・オブ・アーキテクチャー・グラーツ代表取締役。近年のプロジェクト:福利厚生プロジェクト;若い身障者のためのデイケア・センター(ピッシェルスドルフ/2003年)、シュワンベルグ城の知的障害者のための逗留施設(2004年)。居住施設;福祉住宅計画(マルクト・ハルトマンスドルフ/1984年)、(ブリュック・アン・デァ・ムーア/1986年〜2003年)。商業施設;ヒューマニック、カーサ・ピッコラ・ストア(グラーツ/1988年)、ナハトエクスプレス・カフェ(グラーツ/1991年)、カシル・ギャラリーズ(ウィーン及びミュンヘン/1987年〜2000年)、ザ・スピッツ(グラーツ/1992年)、フランクフルト・モーターショーのスタンド(ドイツ/1993年)。

casa piccola, graz 1998
design: Irmfried Windbichler

central operation theatre; universitaetsklinikum graz, 1999
design: Irmfried Windbichle

 

xs-architecture, tram stop
design: Irmfried Windbichler

 

 


 

パーマカルチャ(永続農業)と呼ばれる新しい土地開発に取り組んでいる機関のコミュニティセンターを建設するという仕事は、ウィーン応用芸術大学建築科(プリックス研究室)の学生たちにとってチャレンジであった。地元民になじみのある素材、竹を使ったことは、同時に、複雑な屋根構造の試用実験にも役立った。開発途上国で一般的なおとなしい建物とは異なり、かなり野心的な設計が実現した。同機関の哲学を保持しつつ、全般的に素材の持つロジックと地元の素材を基礎にしている。この様にして大学の研究室から生まれたプロジェクトが損なわれることも削られることもなく、未知の現実へと転換された。

Reiner Zettl
ライナー・ツェットル/芸術史家・教授

ウィーン応用芸術大学(The University of Applied Arts Vienna)およびウィーン芸術アカデミー(the Academy of Fine Art Vienna)で教鞭を執る。京都国立近代美術館、国際デザインセンター、原美術館(東京)でも展示された世界巡回展「デザイン・ナウ:オーストリア(Design Now: Austria)」キュレーター。

 

 

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