Design Triplex 2007


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開催レポート


「日本の空間デザイン賞」デザイン展



左より、宮内功氏、中村拓志氏、鈴木恵千代氏



協賛企業展示



学生プレゼンテーション(コミュニケーションパーティより)
 空間系デザインの社団法人日本ディスプレイデザイン協会(DDA)、社団法人日本商環境設計家協会(JCD)、社団法人日本サインデザイン協会(SDA)の中部支部3団体が、デザイン事業推進委員会(名古屋市・国際デザインセンター・中部デザイン団体協議会)の主催を得て開く「デザイン・トリプレックス」。その3回目となるイベントが、2006年12月20日(水)~25日(月)に開催された。

  「日本の空間デザイン賞」デザイン展では、国際デザインセンター・デザインギャラリーで年間の優秀作品をパネルと映像で展示、会期中の22日(金)には、3団体それぞれの大賞受賞者をパネリストに迎え、シンポジウム「受賞作品を通して今日の空間デザインを語る」が開かれた。

 「日本の空間デザイン賞」は、ディスプレイ・商環境設計・サインの分野で1年間に実現を見た話題作・優秀作を顕彰するもので、ここで選出される作品がもっとも今日的なデザイン動向をうらなうものとなる。大賞とノミネート作品は「年鑑日本の空間デザイン」としても発刊されるが、制作クリエーター、クライアントが一堂に会し、制作意図、経緯、技術問題について直接「対話」のできるシンポジウム、パーティは貴重な機会である。

 

 

 シンポジウムでは、第1部でSDAの「富山ライトレール富山港線トータルデザイン」を、宮内功氏(株式会社GK設計・環境デザイナー)、大場一成氏(富山ライトレール株式会社)がプレゼンテーション。「富山ライトレール」が単なる都市交通への新しい提案ではなく、街づくりそのものであり、優れた車体デザイン、停留所の情報計画、広報計画等のトータル・デザインの展開が、市民意識とライフスタイルを変え、誇りや楽しさを回復する事業であることを印象づけた。

 第2部のJCDは冒頭の平井充・中部支部長のオリエンテーションで、店鋪デザイン計画では、まず営業性・立地・収益の確保が第一要件となり感覚や創意の自由な発揮が可能な分野とは異なると、この分野の特異性が強調されたのだが、大賞作「lotus beauty salon」はあらゆる桎梏から軽々と飛躍し、卓抜な発想によって常識的な営業与件を乗り越える道があることをしめした(中村拓志氏/有限会社NAP建築設計事務所・建築家、小川清子氏/有限会社シスター)。

 「lotus beauty salon」は、三重県の桑名という地方都市にありながらもっとも先端的な店舗を志向する意欲的なオーナーによる企画コンペで、採用された。大小の円で構成されるシームレスの空間を機能的に利用し、白を基調に、パステルカラーのグラデーションでポジションの流動性を表現。直径60mmのパイプ柱で支える空間を極端に薄いフラットルーフで覆い、周囲をガラス壁としてシースルー性を確保、鮮烈なストリートシーンを実現した。

 第3部・DDAの大賞受賞作は「大手町カフェ」。「大手町カフェ」はインドアガーデンを組み込む自然味豊かなビル内カフェだが、一見しただけでは快適イメージの演出以上のものはないかに見える。しかし、植栽は単なる装飾ではなく、環境調整、資源リサイクルに働いて、ゼロエミッションを志向するサスティナブル実験店舗であり、その有効性を展示する先行プラントとして計画されたもの。旧丸ビルで使用されていた大理石板などもカウンターに再利用されるなど、資源リユースの実践事例としても意義ある提案となっている。(鈴木恵千代氏/株式会社乃村工藝社CCカンパニー・空間デザイナー、井上成氏/三菱地所株式会社)。

 今回は3団体3様に、未来社会へ向けての提案性をもったデザインが受賞作となった。デザイン行為のもつ社会的意義について示唆するところも大きく、「明日の空間デザイン」を語るのに好個の事例が揃って、収穫の多いシンポジウムとなった。

 シンポジウムの後、パネリスト、ゲストを交えてコミュニケーションパーティが開かれ、ここでは学生作品のプレゼンテーションが行われた。

高橋英次(展示文化研究所主宰)