空間部門賞/Spatial Division Prize

作品名 ほっこり様
コンセプト ビルが林立する都市部といえど、神社の境内には今でも樹木が逞しく生い茂っています。信仰に疎いといわれるこの国でも、やはり何か不可視の力が作用しているようです。 さて、ほっこり様は日本人に眠っている感覚をくすぐる、ちょっとした装置です。使い方は未来に伝えたい風景の前に、ほっこり様をこっそり置いてくるだけです。 この国の人たちはほっこり様を見つけると、花や小銭をそっと添えて手を合わせ、頭を垂れます。そしてこの風景を壊してはならないことを、暗黙のうち、心に刻みます。日本の風土は、空っぽの箱に風景を守る機能を芽生えさせるようです。 古事記や日本書紀が記される以前から、日本人は様々な場所に神様を招き、そこを不可侵の地として守り続けてきた経緯があります。ほっこり様を媒体に、日本人の慣習や文化そのものが風景を後世へと伝える手段になれば素敵なことだと思います。
審査員コメント 空間デザインの部門でこの作品が受賞したのはとてもシンボリックでアイロニカルでもある。空間の中に象徴的なものを置いて、それを前にしてもう一度自然の大切さを感じたり、自分の佇まいを直すための道具の提案といえるだろう。大変日本的な「ほこら」の形状なので、世界共通のシンボルで考えれば「2001年宇宙の旅」に登場するモノリスのような単なるフラットな板、しかしそこに神が宿っているかのような形状でもよかったかもしれない。あるいは砂を固めて、時間の経過でなくなってしまうというように、自然と同化していくようなマテリアルも考えられる。他の応募作品が都市や田園のランドスケープを大きく変えようとする提案だったのに対して、何か現代のめまぐるしい時間の流れを止めるような、今一度世界や社会について考えてみようという気持ちを起こさせてくれる作品である。プレゼンテーションや言葉に詩的なものが感じられた。

受賞者名 矢野 冬馬/Fuyuma Yano
生年 1984年
性別 男性
国籍 日本
職業 伊藤平左ェ門建築事務所 勤務
学歴 東京理科大学大学院理工学研究科建築学専攻 修了
受賞歴 2009 MITSUBISHI CHEMICAL JUNIOR DESIGNER AWARD 審査員特別賞
2009 東京理科大学大学院 修士設計 最優秀賞
2008 第一回コミーミラーコンペティション 入選