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2014.04.16 |
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コレクションシリーズ vol.10
「POP DESIGN 30s」アメリカ・素材革命の時代
ドレッサー・セット/1930年代後期
ルーサイトと呼ばれたプラスチックと真鍮でできたドレッサーセット。透明度が高く、硬質なプラスチックを金属との組み合わせが高級感を演出している。こうした女性を取り巻くグッズや化粧品は、30年代のハリウッド・ブームの影響を受けて生まれた新しい市場の一つだった。
1930年代は新素材の開発と製品化が急速に進み、人々の生活の中に従来にない素材と色彩があふれた時代だった。20世紀初頭の産業革命がもたらした新しい生産技術、新しい産業形態、そして新しい素材は、産業界に大きな変革をもたらしただけでなくアメリカにおいてはデザイン、カルチャーの分野に新しいスタイルを生み出す役割を果たしたのである。
多種多様なプラスチック素材の開発や樹脂を使ったラッカー塗装の登場、カラーガラスやガラスへのプリント技術の向上などによって、表現の世界は飛躍的に広がった。新素材は鮮やかな色彩とその成型の容易さで、従来とはまったく異なる美的感覚の誕生を誘引した。パステルブルーやピンク色のキッチングッズ、ミントグリーンのラッカー仕上げを施したチェストなど、その色や質感は斬新で明るく、新しい感覚に満ちている。
30年代中頃にはこうした陽気で大衆的、いわゆる「ポップ」なスタイルが人気をあつめ、あらゆる生活用品に取り入れられて行く。リノリウムの床に、スチールパイプとカラフルな合皮でできたテーブルセット。ピカピカに光るトースターやジューサーが並ぶキッチンから、プラスチックやカラフルな陶器の器に盛られて食事が運ばれる。当時の雑誌広告には多くの人々が憧れた新しい生活スタイルをかいま見ることができる。
こうした大衆的でモダンな魅力を備えたポップ・デザインは1950年代にかけてアメリカの一文化をつくりあげ、その魅力は世界中に影響を与えた。そのルーツはこの時代、30年代に登場し、鮮やかな色彩と質感を担った新素材が支えたと言っても過言ではない。
出品例
ライター/1930年代中期
階段状の幾何学模様のモチーフは1920年代に誕生した摩天楼の高層ビル。アール・デコを建築様式に取り入れて道路からセットバックしたビルは建築規制法の条件を満たすためのアイデアだったが、幾何学的な独自の形状は新しい時代の象徴としてさまざまなデザインに取り入れられた。(写真上左)
ヘア・オーナメント/1920年代後期
セルロイド製の髪飾り。色使いもやや渋くフランスのアール・デコの影響を強く感じさせるデザイン。円や幾何学模様を特徴としたアール・デコはアメリカにおいてより軽やかで力強い大衆的なスタイルへと変化したが、1920年代にはまだヨーロッパの優美な雰囲気を色濃く残していた。(写真上中)
アフターシェーブ・ローションのボトル/1934年
ガラスの本体全体にマットなペイントを施し、プラスチック製の蓋と質感のバランスを取っている。デフォルメされた男性の表現がとてもユーモラスで、使い捨てのパッケージとは一線を画す。喫煙具や飲酒など、当時の嗜好品にまつわるグッズにはこうした愛嬌あるデザインが多く見られる。(写真上右)
チェスト/1938年
カラフルなプラスチックや樹脂など新素材の応用は家具にも登場した。従来では考えられなかったこうした色彩感覚は当然のことながら住空間全体に波及し、リノリウムの床からテーブルや椅子といった家具、電化製品、食器やカトラリーなどあらゆるアイテムが軽快で鮮やかな色彩で彩られていった。(写真上左)
ア-ウィン・ラジオ/1938年
主にアクセサリーなどによく使われたプラスチック、「マーブレット」を使ったラジオ。アーウィン社はカラフルで装飾品としても耐えうる小型のプラスチックラジオを数多く生産し、人気を集めた。これらのプラスチックラジオはその装飾性の高さで今なお多くの収集家を魅了し続けている。(写真上右)
オケージョナル・ボックスとパヒューム・ボトル/1937年
1930年代、ガラスは製造技術の向上とともに一気にカラフルになったが、この不透明なグリーンは特にこの時期多く見られる。蓋の部分のモチーフはパイナップルの葉の形を模したもの。当時の交通機関の発達は人々の余暇の過ごし方を変え、リゾート地を連想させる南国のモチーフは人気を集めた。(写真上左)
ネックレス/1930年代中期
マーブレットでできたネックレス。当時の素材開発の勢いは目覚ましく、1930年代だけでも実に20種類以上のプラスチックが発明された。マーブレットは半透明の色出しができる素材として装飾品を中心に使われた。このネックレスではマットな黒色と組み合わせることで半透明の黄色を引き立たせている。(写真上中)
ロック・グラス/1930年代
カラフルな水玉模様を焼き付けたロック・グラス。ガラスの製造技術の向上に加え、飲酒習慣の変化が食器に新しいデザインを生み出した。カクテルパーティが日常的なものとなり女性の飲酒も珍しくなくなると、気軽な飲酒シーンにふさわしいポップなデザインのグラスも多く生産されるようになった。(写真上右)
テーブル・スピーカー/1940年代初期
飲食店などに設置されたスピーカーで、コインを入れると音楽が流れるしくみ。30年代の流線型の特徴である丸いフォルムとライン使いはよりシンプルに省略され、さらにモダンな印象を与える。プラスチックの色使いも40年代に入るとより多彩に、鮮やかになった。(写真上左)
カクテルシェーカー・セット/1930年代後期
フランスのアール・デコがゴールドの華やかさを特徴としたのに対し、アメリカのアール・デコはより未来的なシルバーを多用した。銀色は機械の色であり、科学の色であり、宇宙の色だ。メッキ加工技術の向上もあいまって、光輝く銀色は家電製品やテーブルウェアを中心に数多く登場する。(写真上中)
シガレット・ホルダー/1930年代後期
タバコ屋の店頭で売られたディスプレイ用ホルダー付きのシガレットホルダー。赤、緑、黄色、不透明な色出しから透明色まで、プラスチックの豊かな色の魅力はこんな風に活かされた。不透明なプラスチックはベークライト。透明なプラスチックはルーサイトでできている。(写真上右)
デザインミュージアム・コレクションシリーズ vol.10
「POP DESIGN 30s」アメリカ・素材革命の時代
収蔵品であるアメリカン・アール・デコ・コレクションを紹介してきた展覧会。第10回は、1930年代に次々と誕生しさまざまな製品に使われた新素材に着目し、その登場によって生まれたポップな生活用品とデザイン感覚を紹介。当時を代表する新素材、プラスチックでつくられた食器や電化製品を中心に、樹脂加工による家具やカラーガラスでつくられた食器、喫煙具、アクセサリーなど、カラフルで軽快なデザインの生活用品を展示、紹介。
会期:2004年3月5日(金)〜4月18日(日)
会場:国際デザインセンター・デザインミュージアム
主催:株式会社国際デザインセンター