名古屋市のユネスコ・クリエイティブ・シティズ・ネットワークのデザイン都市認定から2年、ネットワークを活用した国内外の都市との交流も活発になっている。特に2010年度は、加盟デザイン都市間初の共同プロジェクト「CODE: ポスターデザイン・コンペティション2010」が開催され、他の認定都市と多くの経験や成果を共有できたことは、今後の都市間連携につながる大きな一歩と言えよう。
　デザイナーや創造的・文化的な活動をしている人々が生みだすものは、私たちの都市のアイデンティティをかたちづくる。「CODE: ポスターデザイン・コンペティション2010」開催の目的は、ベルリン、ブエノスアイレス、神戸、モントリオール、名古屋、上海、深圳それぞれの都市が持つ、独自に「つくりあげてきたもの」、「つくっているもの」、あるいは将来、「つくりあげるもの」のイメージを創出することにあった。すべての都市は、固有のビジュアル・アイデンティティ、即ち、個性的なCODEを持っている。このコンペティションでは、「各都市はどのようなCODEによって定義されるのか」、「各都市に対してあなたが抱くイメージは？」を探り、世界のクリエイティブな人々とともに、それぞれのデザイン都市の中にあるシンボル、かたち、色、ストーリーといったものを描き出したいと考えた。

※CODE：ベルリンを拠点に活動する ® RUDDIGKEIT CORPORATE IDEAS社のRaban Ruddigkeit氏が考案した造語。City Of DEsign （デザイン都市）、個々のユネスコ・クリエイティブ・シティズが持つ独自のコード（記号／シンボル）を表す。

グランプリ受賞作品「エビフライマフラー」

グランプリ受賞作品「エビフライマフラー」は、本来のテーマである「CODE（記号／シンボル）」というところから、都市の意味を記号化する作品が多い中で、「エビフライ」というものをチョイスした、その感覚が評価された。デザインに不可欠なのは造形力であり、もう一つはやはりユーモアのセンス。名古屋だからこそ勝利を得た作品だと言えるだろう。名古屋では特権的な位置にある「エビフライ」を贅沢に首に巻いた、ゴージャスさと安っぽさとの狭間にある不思議な感じが、この街の文化を象徴している。永遠にあり続ける大事なものではなくて、変わり続けていくおもしろさが名古屋であるという視点に立つと、伝統がどんどん変わっても平気な人たちのカラッと揚がった性格を表すという意味で、まさに“いま”の名古屋が表現されている。

審査を終えて

自分たちがいる場所についてもう一度見直すということで、それぞれがそれぞれの名古屋をもっているということがわかり、とても面白かった。あえて言うならば、もう少し紙のサイズに対する意識を持ってほしかった。／祖父江 慎

金シャチなどモチーフが紋切り型といえば紋切り型とも言えるけれど、それが名古屋のイメージだとするならば、何年続いてもいいと思う。それをいかに現代に落とし込んでいくか、という意味では、なかなか、どれを見ても興味深かった。／建畠 晢

自分の”まち”とか故郷を思い起こさせてくれる良いコンペティションだと思った。最近はとかく外に向けてという企画が多い中で、自分の立ち位置というか根源的な意味みたいなことを改めて問いかけられる内容だった。／廣村 正彰

自分の”まち”をどう見せたいか、どう見られたいか、どのようにPRしたいか。これ一回だけで「ああ、いいのが集まったね」ではなく、宝探しをするような感じで続けていくと、何かが見つかってくると思う。／山内 瞬葉

CODE：ポスターデザイン・コンペティション2010［名古屋］開催記録
テーマ：都市のアイデンティティ
内容
7つのデザイン都市（*ベルリン、ブエノスアイレス、神戸、モントリオール、名古屋、上海、深圳／2010年6月現在）が初めて共同開催したプロジェクト。それぞれの都市にある固有のビジュアル・アイデンティティを表現したポスターを募集。各都市10点合計70点が選ばれ、各参加都市で展示、ウェブサイトに掲載（2010年9月〜2011年末）された。
対象
7デザイン都市で活動するグラフィックデザイナー、イラストレーター、写真家、アーティスト（学生・アマチュアの応募も可）。
入賞作品展（名古屋）
会期：2010年10月9日〜17日
会場：国際デザインセンター・デザインギャラリー
主催：クリエイティブ・デザインシティなごや推進事業実行委員会（名古屋市・株式会社国際デザインセンター・名古屋商工会議所・中部デザイン団体協議会）

（初掲：2010 IdcN Annual Report／2011年6月／転載にあたり補筆、再構成）

※入賞全作品は、クリエイティブ・デザインシティなごやのウェブサイトでご覧いただけます。