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2013.02.15 |
様式の流行〜流線型
バキュームクリーナー/エレクトロラックス社/1937年
デザイン:ルーレル・ギルド
可動型の展示装置”コレクションタワー”では1機ごとにテーマを設け、国際デザインセンターのコレクションを紹介しています。今回は流線型のデザインをテーマにした”コレクションタワー2″を取りあげます。
タワー2で展示している「流線型」のデザインは1930〜40年代アメリカのアール・デコ期の特徴的なスタイルである。「アール・デコ」(装飾美術の意)とは1925年の「現代装飾美術・産業美術国際展」(パリ)にはじまる特徴的な幾何学表現をいう。私たちが「アメリカン・アール・デコ」と呼んでいるのは、フランス生まれのこの幾何学的な表現がアメリカにおいて独自のスタイルへと変化したものだ。
流線型は始め機関車や自動車など、輸送機関のスピード効率のために導入された形だった。急速な産業の機械化が進んだこの頃、人々の中には機械を俗悪なものとする否定派も少なからずいたが、技術による恩恵を明確かつ斬新に表現した流線型は大衆の人気をおおいに集めることとなった。丸みのあるフォルムと流れるような線を施されると、直接スピードとは関係のない家電製品までもが売上げをのばしたのである。
この愛嬌あふれるスタイルは一見楽観的な技術信奉の現れとも見える。だが当時の芸術家や知識人にとって機械技術は、目標のための一要素として認識されていたようだ。彼らは新しい芸術と独自の文化を求め、古い因習や意識の改革を目指して近代化を推し進めた。今世紀の終わりになって私たちは妄信的な技術革新に猛省を迫られているが、当時の彼らは必ずしも機械のもたらす利点のみを見ていたわけではない。問題は機械科学の発展の是非ではなく、それを使う側である私たちの意識であろう。
1920年代、機械の美をとなえ多くの作品を残した芸術家ポール・ストランドはエッセイにこう記している。「全三位一体(三位=機械・科学・唯物論的経験主義)は人間化されなければならない。さもなくば我々を非人間化するだろう」