アメリカン・アールデコ・コレクション

2013.02.15

スパートン・ラジオ

スパートン・ラジオ/1936年/スパークス・ウィシントン社製
デザイン:ウォルター・ダーウィン・ティーグ
流線型を意識したスタイリングとミラー使いが特徴的なラジオ。コバルトブルー・ミラーはそれ自体が技術と未来をイメージさせる美しい素材だった。

フランスの母親は子供が美しいフランス語を話すことが自慢の一つだという。自国の文化に対する意識は国によってさまざまだが、日本ではちょっと聞かない話である。この国では独自のスタイルを持つことへの意識がいまひとつ弱いようだ。それは自らへの自信の一つであり、時には文化のエネルギーともなるものである。
 30年代のアメリカでつくられたこのラジオを初めて見た時、アカデミックな意識や評価は別にしても、堂々としたその姿には素直に「何だかすごい」と感じさせるものがあった。
 20世紀初頭、機械技術が急激に日常の生活に入り込みはじめた時、アメリカでは芸術家、デザイナー、そして大衆が積極的に「機械」を受入れ、賛美した。輸送機関の発展を機にスピード感を持つ独特の流線型が登場。工業技術の推進は産業形態に組み込まれることで人々にまったく新しいスタイルを提案した。それまでヨーロッパをお手本とし続けたアメリカは、ここにきてようやくアメリカ独自のスタイルをつくりあげたのである。
 流線型や素材開発の洗練を受けた当時の品々は力強く、自信に満ちあふれている。手放しの機械賛美には同調しかねる部分も多いのだが、もの真似ではない独自性を生み出したその誇りのようなものは、何より見る人を圧倒する力をもっている。