アメリカン・アールデコ・コレクション

2014.05.01
 
 

コレクションシリーズ vol.11

「30s GRAPHICS」アメリカン・アール・デコのグラフィックデザイン

「30s GRAPHICS」アメリカン・アール・デコのグラフィックデザイン(フライヤー・イメージ)

「30s GRAPHICS」アメリカン・アール・デコのグラフィックデザイン(展示会場)

デザインの世界でも制作過程が比較的単純な分野は変化を取り入れやすく、新しいスタイルへの移行が早い。1920年代~30年代にヨーロッパを席巻したアール・デコはやがてアメリカに波及したが、印刷表現の分野では早くからそのきざしを見ることができる。

1920年代後期には直線的に描かれたイラストレーションや幾何学模様が雑誌、書籍類に登場し、アール・デコの鮮やかな色と大胆なレイアウトはさまざまな媒体へと広がっていった。初期のややエレガントなスタイルは、経済発展とメディアの発達の中でわずかな間に変化し、カラー印刷の普及とともに独自の強く直接的なものになっていく。この時期のアメリカにおいて、グラフィックデザインは美しい装飾芸術としてではなく、むしろ優れた訴求力を持つコミュニケーションツールとして評価されたと言っていい。

1930年代に入りルーズヴェルトが大規模な経済復興政策を打ち出すと、グラフィックデザインの可能性はさらに広がりを見せる。中でも事業促進局(WPA=Works Progress Administration)による芸術家支援プログラムは、観光事業などさまざまな活動をPRする広報物にアーチストを起用し、美しいポスターを数多く生み出した。ジェローム・ロスのポスター「シー・アメリカ」、ブランチ・アーニシュの「トレーニング・イン・アート」などシンプルな幾何学形態で構成されたポスターは、強いメッセージ性を備えつつ、造形的にも非常に洗練された表現を確立している。

またこの時期を代表するポスターとしては、1933年のシカゴ万博、1939年のニューヨーク万国博覧会など、博覧会の公式ポスターも見逃すことができない。特にストーらによるニューヨーク万国博覧会のポスターは、復興を果たしたアメリカのモダンで力に満ちたイメージを内外に強く印象づけるものだった。「明日の世界」をテーマに世界初のテレビ放送も公開されたこの博覧会では多数のスーベニアグッズが制作されたが、それらのデザインもやはり広報物のイメージを損ねることのない魅力的なものであった。

当時このような形で芸術家やデザイナーが起用された意義は大きく、デザインが社会において果たす役割と影響力はアメリカ社会に広く受け入れられ、認知されていった。公的な印刷物に限らず、商品の広告やパッケージにおけるグラフィックデザインも戦略としてより重視され、それらは時に商品のメーカーやブランドのイメージをもつくりあげていったのである。

主な作品

WINTER SPORTS HAWAII ATLANTIC CITY

ウィンター・スポーツ/1935年/サッシャ・モーラー(写真上左)
ハワイ/1940年代/デザイナー不詳(写真上中)
アトランティック・シティ/1935年/サッシャ・モーラー(写真上右)

YOSEMITE SEE AMERICA Colorado Rockies

ヨセミテ/1935年/スタレット・ウィリアムズ(写真上左)
シー・アメリカ/1930年代/ジェローム・ロス(写真上中)
コロラド・ロッキーズ/1930年/H. M. ヴィームストア(写真上右)

TEXAS TEXAS SAN DIEGO World's Fair

テキサス/1936年/フローリアン(写真上左・中)
サンディエゴ博公式ポスター/1930年代/デザイナー不詳(写真上右)

INDIAN COURT INDIAN COURT INDIAN COURT

サンフランシスコ万博インディアン・コート公式ポスター/1939年/ルイズ・シーグリスト(写真上いずれも)

NEW YORK WORLD'S FAIR NEW YORK WORLD'S FAIR NEW YORK WORLD'S FAIR

ニューヨーク万博公式ポスター
1939年/アリス・マンフォード・クーリン(写真上左)/ジョセフ・ビンダー(写真上中)/アセトン(写真上右)

NEW YORK WORLD'S FAIR NEW YORK WORLD'S FAIR CHICAGO WORLD'S FAIR

ニューヨーク万博公式ポスター/1940年/デザイナー不詳(写真上左・中)
シカゴ万博公式ポスター/1933年/ワイマー・パーセル(写真上右)

SINCLAIR FOREIGN TRADE ZONE RED CROSS

シンクレア・モーターオイル/1930年代/デザイナー不詳(写真上左)
フォーレン・トレード・ゾーン/1937年/ジャック・リヴォルタ(写真上中)
赤十字/1930年代/デイ・ローリー(写真上右)

Sky Ride NATIONAL AIR RACES RUR

スカイ・ライド/1934年/サンドール(写真上左)
ナショナル・エアー・レース/1933年/サンドール(写真上中)
RUR/1930年代/ロバート・マッチリー(写真上右)

MUSIC INSPIRES FEDERAL ART PROJECT TRAINING IN ART

ミュージック・インスパイア/1942年/ジェームス・アクセルロッド(写真上左)
フェデラル・アート・プロジェクト/1930年代/デザイナー不詳(写真上中)
トレーニング・イン・アート/1937年/ブランチ・アーニシュ(写真上右)

デザインミュージアム・コレクションシリーズ vol.11
「30s GRAPHICS」アメリカン・アール・デコのグラフィックデザイン
デザインセンターの収蔵品であるアメリカン・アール・デコ作品をテーマごとに紹介するシリーズ展の第11回展。メディアの普及とともに人々の生活に大きな影響を与えた当時のグラフィックデザイン。本展では数々のポスターを中心に、雑誌、広告など当時の多彩なグラフィック表現をご紹介するとともに、1930年代の万博公式ポスター、スーベニアグッズ等もあわせて展示。
出展作品数:約100点
会期:2005年3月18日(金)〜4月17日(日)
会場:国際デザインセンター・デザインミュージアム
主催:株式会社国際デザインセンター