2013.10.01 |
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第7回を迎えた国際コンペティション「名古屋デザインDO! 2010」では、「クリエイティブ・デザインシティなごや」のビジョンのもと、私たちがめざす社会のためにデザインで何ができるのかを投げかけた。あなたの10年後、20年後。あるいは100年後の世界のことを。未来をまもり、救うために、デザインができることを。テーマ「未来のために―まもる・すくう・できる」に対して、世界26ヶ国・地域の1,503点の応募を集め、入賞5点(グランプリ1点、部門賞4点)、入選20点が選出された。(IdcN)
第7回国際コンペティション「名古屋デザインDO! 2010」開催レポート
「未来のために―まもる・すくう・できる」
プロダクトデザインは今、環境や持続可能性の面から見て、製品の作りすぎや、本当に必要のあるものを作っているのだろうかという問題に直面している。「デザイナーは未来に対して何ができるのか?」が今回のコンペのテーマであった。
20世紀という時代は、いかに生産能力を上げて高品質のものをみんなが安く快適に使えるようにするかを目指したわけで、そのこと自体が悪いわけではない。しかし際限もなくつくった結果がさまざまな問題を引き起こしている。今、持続可能性に対してデザイナーが一番考えなくてはいけないことは、やはり未来に対して夢を語る具体的なイマジネーションの力だと思う。未来の社会がこうなっていったらいいという、ワクワクドキドキするイメージをみんなに具体的に示すプレゼンテーション能力が求められている。今回の応募作品を振り返えると、単なるモノの提案ではなくて、新しい感動や未来に対する気持ちの強さが感じられる作品に出会えた。
先が見えない時代ではあるが、皆のイマジネーションの力を合わせていけば、よい世界に向かって進んでいけるのではないかと強く感じる事ができたコンペであった。
(浅井 治彦/第7回国際コンペティション 名古屋デザインDO!2010 審査委員長)
グランプリ受賞「てことば」
デザイン:吉田 由梨/企業内デザイナー
コンセプト
手話を使い、言葉が生まれる瞬間を追体験してみたいと思った。普段、私たちが意識せずに使っているコミュニケーションツールとしての言語は、現実にはひとつひとつの言葉に分解され、それが相互に繋がることで他者に到達する。しかし、日常会話の中ではそんなことは一切意識されない。手話においては、そういった自明性の中に埋没してしまった部品としての、言葉の発せられる瞬間が具体的なかたちとして目に見えてくるのだ。あたりまえのコミュニケーションのあたりまえではない部分を感じるために取り組んだプロジェクトである。滑らかな音でなく、無骨な仕草だからこそ、言葉の送り手も、受け手も、お互いに一歩ずつ相手に近づこうとする。だからこそ、その滑らかでないところに、私は希望を感じる。そこにコミュニケーションを感じている。(吉田 由梨)
審査員コメント
作者が手話に出会った最初の驚きや感動を、人のコミュニケーションの本質的なものにつなげ、映像と本の形態で美しく感動的に表現している。デザインのスキルを使って、わたしたちの言葉が持っている命の動きのようなものを視覚化した作品であり、自分たちがどのような世界にいるのかをもう一度認識し直す試みともいえる。我々の周りで日常起きていることに新しい視点を与えることが、21世紀のこれからに必要なデザインのありかたではないだろうか。その意味で、デザインの可能性を大いに広げてくれる素晴らしい作品である。
国際コンペティション 名古屋デザインDO!
才能を秘めた若いデザイナーの育成と交流を目指し、広く世界に向けて開かれた国際コンペティション。1998年の第1回から2010年の第7回まで2年ごとに開催。
(初掲:2010 IdcN Annual Report/2011年6月)
※全受賞作品、各審査員の講評は、第7回国際コンペティション「名古屋デザインDO! 2010」ウェブサイトでご覧いただけます。