国際若手デザイナーワークショップ2001 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
都市の隠された情報を開く 伊藤俊治 美術史家/多摩美術大学教授 盲人用ブロックの形から密集した雑居ビルの隙間まで、見向きもされなくなった電話ボックスから独身者だらけになったライフ・スタイルまで、人と人との距離から奇妙な時間の間、自然発生する列や流れまで、都市にはさまざまな隠された情報や見えない関係、閉ざされた秘密があふれている。そして現実には確かに存在するのに見えなかったり、気づかなかったりするこれらのものから実は私たちは大きな影響を受け、都市はそのことによって成立しているのかもしれない。 国際若手デザイナーワークショップ2001は、こうした“都市の無意識”とでも呼べるものをフィールドワークから発見し、具体的な提案型のデザインに落としこんでゆく。都市の見えない欲望のプログラム、都市の隠れた記憶のネットワーク、都市を動かしているスーパーシステム、都市の秘められた身体のスタイル、都市の中で暗黙に共有された歴史や物語……。そうしたものを見つけに都市の内部へ入り込み、観察し、調査し、問題群を顕在化させる。 そこでもう一度自分の感じ方やとらえ方を検証してみよう。さらに他者の感じ方やとらえ方を受け入れてみよう。対話と共通 体験により他者の想像力や創造力を自分の中に組み込み、展開させることがコミュニケーションの基本である。そのことは宗教や民族、文明やメディアの衝突がさまざまな形で予感される21世紀を生きるデザイナーにとって最重要の課題である。相手が何を感じ、考えているのかを、手さぐりで探しながら、同時に都市の光と闇を浮かびあがらせてゆく。地下鉄や路地の匂い、壁や樹木の手ざわり、歩行や雲、月の速度、子供や老人の視覚、いつも鳴り響いているノイズやサブリミナルなサイン……。そうしたものを通 して都市と人間、都市と自然、都市と時代などの関係を探究し、ひとつの提案を具体化し、そこから再び新しい問いを発してゆく。多種多様な形で潜在化している“都市の無意識”を露にし、その問題点を指示し、それをどう表現してゆくかの議論を積み重ねてゆく。新しいコミュニケーションの発見は、こうした“都市の無意識”をともに見い出し、共有することから始まってゆく。そしてそれは新しい関係をデザインしてゆくことでもある。
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■企画メンバー
伊藤俊治(Toshiharu Ito) 美術史家/多摩美術大学教授 1953年秋田市生まれ。東京大学大学院修士課程修了(西洋美術史専攻)。美術史・写 真史・美術評論・メディア論などを中軸としつつ、建築・デザインから音楽・映画まで、19世紀文化、20世紀文化全般 にわたる旺盛な評論活動を展開。多摩美術大学教授。IMI総括ディレクター。主な著書に「写 真都市」(冬樹社)、「裸体の森へ」(筑摩書房)、「20世紀写真史」(筑摩書房)、「ジオラマ論」(リブロポート)、「生体廃虚論」(リブロポート)、「写 真と絵画のアルケオロジー」(白水社)、「マジカル・ヘアー」(パルコ出版)、「ディスコミュニケーション」(植島啓司との共著/リブロポート)。主な展覧会ディレクションに、「移動する聖地」「デジタル・バウハウス」(インターコミュニケーションセンター)、「無意識の共鳴」(横浜市民ギャラリー)、「記録/記憶の漂流者たち」(東京都写 真美術館) 竹山 聖(Kiyoshi Sey Takeyama) 建築家/京都大学助教授 1954年大阪府生まれ。京都大学を卒業後、東京大学大学院に進学。原広司の下で修士課程、博士課程を修める。79年設計組織アモルフ創設。92年より京都大学助教授。旺盛な設計活動と並行して、学生たちと古代都市遺跡を訪れ、都市発生を探求。91年アンドレア・パラディオ賞。96年ミラノ・トリエンナーレ日本チーム・コミッショナー。98年よりスペイン・ヴァレンシア工科大学、99年よりパリ・ラヴィレット建築大学でワークショップを行い、学生の指導にあたっている。主な建築作品に、86年湘南台文化センターコンペ2等、87年愛知県新文化会館コンペ佳作「OXY乃木坂」(アンドレア・パラディオ賞)、88年「軽井沢の別 荘」(吉岡賞)。89年「D-HOTEL大阪」、「箱根・強羅花壇」。91年「TERRAZZA」。94年「周東町PASTORAL HALL」。98年「山本寛斎ビル」。2000年「Refraction House」、「SM House」。主な著作に作品集「竹山聖」(六耀社)ほか 深澤 直人(Naoto Fukasawa) IDEO JAPAN代表 人の無意識下の行為や現象に興味をもつ。これを、日本の企業内デザイナーとともにデザインに置き換え具体化したのがNEC「white box」、エプソン「Printables」(いずれも国内およびロンドン・デザイン・ミュージアム、ベルリン・インターナショナル・デザイン・エキシビションで展示)、I.D.誌アニュアル・デザイン・レビュー、IDEA金賞受賞の「without thought」(ダイヤモンド・デザイン・マネージメント・ネットワークで異業種デザイナーと共作)等である。松下電器産業と行った「New Domestic Cooking Tools」は、『Domus』、『Form』、『Interior View』、『Wallpaper』等に掲載され話題となる。「without thought」の中のCDプレーヤーはMUJIで製品化。2000年竹尾ペーパーショー「REDESIGN」展にティーバッグを出品。最近ではニューヨーク近代美術館の企画展「Workspheres」に作品「Personal Skies」を招待出品。多摩美術大学立体デザイン科卒業。1989年IDEOの前身・ID TWO(サンフランシスコ)入社、96年帰国、IDEO日本支社設立。これまでにデザインしたプロダクトは40を超えるデザイン賞を受賞 石橋勝利(Katsutoshi Ishibashi) AXIS編集長 1965年大阪生まれ。大阪外国語大学アラビア語学科卒業。同校ではアラビア語とともに中東政治、おもにパレスチナ問題を研究し、現在も中東問題には関心が深い。1996年株式会社アクシス入社、デザイン誌「AXIS」およびビジネス誌の編集に携わった後、98年よりAXIS編集長 |
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