多面体U.G.サトー、笑いのDNA |
U.G.
サトー氏の作品の魅力は、遊び心に満ちあふれているところにある。 ユーモアやイリュージョンを駆使して創られたそれらは、どれもわかりやすく、デザインという象牙の塔にこもった難解さはない。といって漫画のようにおしゃべりでも説明的でもない。独特の線で描かれたイラストレーションは、視覚言語に近づいて説得力がある。グラフィック・デザインの本質は、ビジュアル・コミュニケーションだと断言し、アート志向やアートくずれをバッサリと切る。 作品のおもしろさの秘訣は、ひとつには童心を失わないことにあるのではないか。 子供のような好奇心といたずら心を絶えずはたらかせて夢中になる。身近なものを見立てて顔づくしの絵本にしたり、赤と青のひとつづきの2本の線だけで物語を描いて見せる。子供を喜ばせるだけでなく、大人も童心に帰して癒しの効果さえ与えている。 反面、世界や社会の不条理に対する反抗精神も並大抵ではない。 氏の少年時代の戦争の記憶、さらに被爆の実体や環境破壊に心を痛めてきたことが深く影響しているのだろう。1995年フランスの核実験に抗議し、日本のデザイナー150人のポスターを持ってパリに乗り込み、街頭デモンストレーションをした行動は記憶に新しい。常識的な考え方や見方、権威主義への抵抗は、氏の創造のエネルギーにさえなっている。諷刺精神にあふれたポスターの数々、文字盤の数字のすべてを落下させた掛時計などが、それを示している。 一方、エロチックな表現にも氏は貪欲である。 女性の長い脚に履かれたハイヒールは、実は踏みつけられた男性であったり、男性の脳のひだは、あまたの男女の交歓図であったりする。ドキリとさせられるようなきわどいモチーフや、重くて暗いテーマを扱ったものでも、見ているうちに自ずと笑みがもれてくるのは、氏のエスプリに裏付けられたポジティブ思考のなせる技である。 U.G. サトー氏の展覧会は、人の目をあざむくアイデアと、人の心をくすぐるユーモアで、ビジュアル・メッセージの楽しさ、面白さを存分に教えてくれるであろう。 |
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ポスター/自然遺産を守ろう/1999 | ||
絵本「かお みえるかな」/2003 | ||
ポスター/自然との対話/1998 | ポスター/U.G. サトーの進化論/1990 | |
カレンダー/2002 | アニメーション/Treedom/1999 |