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INTERVIEW:登録企業の魅力をご紹介

クリスタル産業 株式会社

2012年にステッキ「Elepaio(エレパイオ)」でグッドデザイン賞(Gマーク)を受賞した福祉用具のメーカー、クリスタル産業株式会社。「2本目に買ってほしいステッキ」をキーワードに販売しているこのステッキの開発には5年もの期間が必要だった。その開発について社長の上村氏に話を伺った。

Elepaio画像

  • 聞き手:「エレパイオ」は普段使いが目的のステッキですよね。
  • 上村:そうです。弊社は福祉用具の中でも、ケイン(ステッキ)やクラッチ(松葉杖)と呼ばれる杖や歩行器を製造しているメーカーです。特にケインは1965年の創業時から製造しており、力を入れている分野です。ケインには、リハビリ用のものと普段用のものがありますが、「エレパイオ」は後者です。是非2本目に持ってほしいですね。

Q.事業連携をキーワードに今回の開発事例についてお聞かせください。

  • 聞き手:まず、デザイナーとの連携について…
  • 上村:名古屋市の福祉機器の展示会で公益財団法人 名古屋産業振興公社の名古屋市新事業支援センターの方とお会いしたのがきっかけです。彼がデサイナーについて話をしてくれ、名古屋市のデザイン活用支援事業や国際デザインセンターを紹介してくれました。
    たぶん、彼の頭に、この企業とあの企業を足したり、掛けたりしたら面白くなるのでは…というアドバイザー的な感覚があったんだと思います。普通、作り手は自分の所で作って売ることしか考えませんから…
    当時は全て、ものづくりとは社内で揉んで形にしていくものだと思っていました。本当にデザイナーについての知識がなく、建築家ぐらいしか思い浮かびませんでした。工業デザイナーやグラフィックデザイナーがいるなんて…。何よりも、どうやって外部の方にデザインを委託し、どうやってそのデザインに自分たちが価値を見出していったらいいのか、どのようにコミュニケーションし、どんな人を探したらいいのか全く分かりませんでした。
    その状態で、名古屋市のデザイン活用支援事業のマッチングで、デザイナーの吉田修作氏(デザイン事務所「意匠計画」)を紹介してもらいました。さらに、製造段階では台湾のメーカーと繋がることができ、Gマーク受賞に至ったわけです。
  • 聞き手:海外のメーカーと連携して製造しているんですね。
  • Elepaioグリップのデザイン検討写真
  • 上村:そうです。具体的には、台湾のメーカーに金型や部品の供給をお願いし、弊社で加工組立を行って製造しています。最初は国内での連携を考えていましたが、色々探して現在の台湾のメーカーに決めました。きっかけは大阪の商工会議所主催の台湾メーカーとの商談会でした。名古屋から来たのは弊社だけで、VIP待遇されてしまい、簡単に帰れませんでした(笑)。その商談会で出会った中の1社と連携しています。台湾メーカーとは過去につきあいもあったので、コミュニケーションは問題ありませんでした。先方は自動車系の部品を製造する企業で、日本企業との連携は初めてだったこともあり、こちらとの連携に積極的で、社長の熱意も強く、小ロットでありながら様々な要望に応えてくれたのが魅力でした。
  • 聞き手:デザイナーと連携を開始して製品化まで5年ぐらいかかりましたね。
  • 上村:そうですね。それは、連携先を探すのに時間がかかったからということもありますが、実際に使えるものにしたくて何回も試作したからでもあります。デザインを決めるのに結局2年ぐらいかけました。シボの具合など、細かい部分までデザインを検討しました。また、試作についてもいろいろな素材を試しました。例えば、試作して分かったことですが、これまでのグリップとエレパイオのグリップは素材が異なるため、普段使っていた接着剤だと十分な接着強度が出なかったので、別のものを探したりしました。その他、経年劣化、寒冷地での問題など、長期間使用するものなので慎重に仕様を決めました。実際3歩進んで2歩下がる感じでしたね(笑)

Q.今回の商品開発でのポイントは何ですか?

  • 上村:やはり、デザイナーの吉田さんと一緒になってイメージを固めていったことに尽きると思います。
    僕が伝えたイメージ(テーマやコンセプト)をデザイナーが具体的な形にしていく開発スタイルでした。たぶん、彼は毎日ステッキを持ち歩き、商品ストーリーを想定しながらデザインをしてくれたのだと思います。結局、色々なアイディアを試しました。不思議なことにどの案も大変良く、ブラッシュアップすればするほど、ケチのつけようがなくなっていきました。納得したものづくりをすると否定する所がなくなっていくんですね。
    福祉用具の分野は、物自体は非常にユニバーサルなものです。つまり、どこにでもある生活用具なんです。そういった当たり前のものをデザインすることは、特殊なものをデザインすることとは違って意外と難しいと思います。そういう意味でいうとエレパイオはうまくいった事例ではないでしょうか。いや、周りがうまく連携してくれた、と言うべきですね。
  • ElepaioグリップのCGと模型写真

Q.Gマーク取得により販路の広がりはありましたか?

    Elepaio画像
  • 上村:いやいや、福祉用具は雑貨とは違います。毎日の生活に使う道具ですから、ユーザーが「何かしっくりこないなぁ」と感じるようではいけません。福祉用具は本来、フィッティングなしには販売してはいけない商品なんです。実際に試していただかずに販売してしまえば、事故を招いてしまうこともあるでしょう。
    ただ、福祉用具はたくさんの種類があり、目的や用途に合わせて使うためには、専門的な知識が必要です。本来は福祉用具相談員などの専門家に相談するべきですが、なかなかそこまではたどり着けません。また、試すといってもそのような店舗を見つけることは困難です。そのため、多くの人が1本目は失敗した道具選びをしてしまうんです。
    そうした方に是非ともこの「エレパイオ」に巡り会ってほしいですね。1本目と比べてもらって、手のフィット感などの違いやちょっとしたことに不自由を感じていた部分が改善されていることを確認してほしいです。ですから、2本目に持ってほしいステッキなんです。

Q.最後に、今後の展望などについて教えてください。

  • 上村:現在、障害者スポーツ、具体的にはアンプティサッカーという上肢・下肢切断者がクラッチ(松葉杖)を用いて行うサッカーがあるのですが、そのアンプティサッカーに使用するクラッチの開発を計画しています。弊社のような小規模事業者は、大手企業のようにスポンサーとして金銭的にバックアップすることはできませんが、競技選手に密着したものづくりの部分では協力できます(笑)。
    この2~3年の間に競技現場に通い、選手などに話を聞き、デザイナーと組んでたくさんの試作を重ねたいと思っています。開発の途中では、新たな連携先を模索する必要が出るかもしれませんね。大変激しいスポーツの中で使用されるクラッチには、過酷な状況に対応した機能が必要になると思います。その開発を行うことで、弊社の商品全体の質の向上に繋げられると考えています。今後も、道具として10年、20年と長く使ってもらえるような製品を開発していきたいですね。
  • 製品に囲まれる上村氏の写真